障害者雇用支援を専門性×テクノロジーで解決する株式会社D&I様は、2025年2月13日に華々しく上場を果たしました。
障害者雇用という新しい市場をどのように創造したのか。そこには明確な理念ドリブンによる文化構築と採用戦略がありました。
市場なき世界に挑んだからこその苦悩とリアルな成長過程を本記事を通してお伝えできればと思います。

インタビュー対象者 プロフィール
小林鉄郎(Kobayashi Tetsuro)
代表取締役
1985年生まれ。石川県金沢市出身
2007年新卒で株式会社ジェイブレインへ入社。新規事業として障害者雇用支援事業立ち上げに携わる。2009年代表杉本とともに株式会社D&I創業、取締役就任。全事業を統括。2021年6月、代表取締役に就任。
1. 課題
興味はあるが、導入はされない。法改正を待たず、自らの足で啓蒙し続けた「市場創造」の苦悩とリアル
――創業当時どのような思いで事業を始められたのでしょうか?――
当時は制度や法整備はあったものの、実際の現場で障害のある方が活躍できる環境は、まだまだ足りませんでした。そのため多くの企業が法定雇用率を政府が課した義務として、障害者を雇用していました。そこに違和感をもっていたこともあり私たちは「義務として雇用の場をつくる」のではなく、「戦力として活躍できる環境を創りたい」という想いからスタートしました。
――スタート当時の市場の反応はいかがでしたか?――
当時は市場そのものがない状態でした。参考にできる事例も殆どない中での挑戦でもあり、不安もありました。ただ、「障害者雇用を義務から戦力にしたい」という信念が創業者の杉本(故人)含めて強くあったので、未知の領域にも足を踏み入れることができました。
――市場創造における具体的な難しさは何でしたか?――
事例がないからこそ、長い時間をかけて啓蒙や説明をする時間が必要でした。興味を引くという意味では、目新しさがあったので話を聞いてくれるということはありました。しかしながら、いざサービスの導入となると一気に足が重くなる印象が残っています。法の制度として障害者雇用は必要である、しかしながらサービスは導入しない。このジレンマにとても悩まされました。
――興味はあるけど、導入してくれない。このジレンマをどのように乗り越えたのでしょうか?――
結局のところは何度もクライアント先に足を運んで、重要性と社会的な意義を伝え続ける。これが何より大きな要因だったと思います。もちろん法定雇用率の改正など社会としての後押しもありました。しかし、市場創造において本質的に重要なのは、外部環境への期待ではなく、自分たちがコントロールできることへリソースをつぎ込むことです。だからこそ困難は当然のこととして受け止めていましたし、直ぐに上手くいくとも思っていませんでした。
未来を描くことと、希望的観測を混同しないことが重要だと思います。

2. きっかけ
レールの上を走るな、レールを敷け。変化の激しい市場創造フェーズで、スキル以上に求めた“GRIT”の定義
――市場創造に挑む中で、どのような人材を求めていたのでしょうか?――
一番は「困難や変化の激しい環境でも自ら考えてやり抜ける人」まさにGRIT人材です。スキルや経験の有無よりも、困難を乗り越える粘り強さや、最後までやり抜く力を重視しています。なぜなら弊社が挑んでいるのは不確実性が高く、変化の激しい市場創造だからです。
とくに障害者雇用における法改正やルールは定期的にアップデートされます。
そのため変化を前提として事業に取り組む姿勢が必要となります。だからこそ、決まったレールを走るのではなく、自らレールを敷いて進んでいくことが必要となります。そのため単に仕事をこなすだけではなく、事業全体を前進させる人材を常に採用することを心がけました。
また、上記の特性に加え、個ではなくチームでどのように成果を上げるかに没頭できる人材も重要です。弊社では、障害のある方々の入社からオンボーディング、そして戦力化までの支援を一気通貫で行っています。各チームがバリューを発揮しているからこそ、D&Iを利用する価値が最大化されています。最大の価値提供は、圧倒的な個人ではなくチームワークによって創出されるものと考えております。そのためにも、会社が目指す目的や理念に共感し社会性を持って取り組める人材が重要となります。
3.成果
サッカー上位リーグとMVPの両立。残業せずに成果を出す、GRIT人材ならではの“高密度な働き方”
――実際に入社したGRIT人材の事例があれば教えてください。――
22卒で入社の大滝が、現在活躍してくれています。
彼はとにかく当時から「素直に物事を受け取れる人材」でした。業務などのフィードバックに対しても、気持ちよく受け取ってくれる。「打って響く」というのはまさに彼のことなのかなと。そして、指摘に対しては、自らの成長の糧に変えていました。とくに改善すべき箇所や伸びしろをそのまま放置するのではなく、修正できるまで徹底するという「やり抜く姿勢」がとても印象的です。そのため、顧客に対しても細かい部分まで丁寧にフォローし、相手が納得するまで伴走していくスタイルが結果に繋がっているように感じます。
また教えられ上手ということは、先輩からも可愛がられる存在です。その特性もあり、顧客の懐に大胆に踏み込み距離を近づけることができるのも彼の特徴です。
22卒 大滝さん
――「打って響く」とても重要ですよね。最近はどのような活躍をされていますか?――
最近では、事業成長を牽引してもらうためポジション変更しました。しかし、その環境変化も難なくこなし、短期間で成果を上げてくれました。さらに凄いのがサッカーの上位リーグで活躍しながら、残業をほとんどせずにMVPを獲得するなど、働き方の面でも新しいロールモデルを体現しています。
―他の社員も採用されていますが、GRIT力がある人材に共通して言えることはありますか――
経営層や上司が考えていることに対しての感度が非常に高いところです。具体的に言うと、新しいサービスを始めたり、方針が提示された際にただそれを受け取るのではなく、当事者として自分事にできる。尚且つ、自身の考えを持って方針を実行し、やり抜く。ここが共通している点ですね。
前途でも述べましたが、弊社は障害者雇用を一気通貫で支援し、テクノロジーを駆使して戦力化まで実現することを強みとしています。そのためサービス範囲が広いだけでなく、新たなサービスを生み出し続ける必要があります。そのようなスピードや変化が激しい状況の中においても、圧倒的な当事者として業務に励んでいる姿勢が見受けられます。

4.活用ポイント
「24時間365日は一緒にいられない」。だからこそ“働く幸せ”を約束する、D&I流の誠実な組織設計
―― 市場創造のための組織作りにおいて具体的には、どのような体制や工夫をされているのでしょうか?――
会社が目指すべき姿(理念、スピリット)と、会社が提供すること(プロミス)を明文化することです。
会社が大切にしているのは、社員に対して一方的に成果を求めることではなく、理念や約束を「双方向」から考慮し提示する姿勢です。
――具体的にはどのようなことなのでしょうか?――
まず、D&IのMissionやVisionはもちろんある中、社員に求める考え方や行動の軸として「スピリット」を構築しました。これは、組織が成長していく過程で「D&Iらしさとは何か」を問い直し、単なるスローガンではなく実際に行動につながるように設計されたものです。さらに「義務から戦力へ、人生の選択肢を」というバリューを掲げました。これは個々人が仕事を通じてどのような価値を提供しているのかを明確にし、主体性を発揮し、長期的に成長していけるような方向性を示しました。
その後、私が代表に就任したタイミングで、“働くを通して、幸せを”という「D&I Promise」を策定しました。これは私の想いでもあるのですが、やはり会社が社員に求めるだけではなく、会社としても社員に対してどのような約束を果たすのかを示したいと思ったからです。
――「D&I Promise」への想いを教えてください。――
まず前提として、社員全員と24時間365日を共にすることは、実質不可能であると考えています。どうしても一緒にいる時間は限られます。そのため社員一人ひとりの人生全体を保証することはできません。しかし、だからこそ働いている時間は仕事を通じて幸せを感じてもらえるようにしたいと思っています。そのため「D&I Promise」には会社として全力でコミットする、という意思が込められています。この約束をつくる過程では、「意志」「挑戦」「成長」といったキーワードが重視され、経営陣と人事部門が時間をかけて議論し、磨き上げてきました。
つまり、社員に対しては「スピリット」で“どうあってほしいか”を示し、会社としては「Promise」で“どう支えるか”を明確にしたのです。目指すべき姿と約束の両輪を明文化することによって、単なる上下関係ではなく、社員と会社が対等に信頼関係を築きながら進んでいく文化が形づくられています。

5. 今後の展望
専門性×テクノロジーで、社会課題をシンプルに解決する。障害者雇用の“インフラ”を目指す次なる挑戦
――今後の事業展望を教えてください。――
海外と比較しても、この領域は依然として市場創造の途上にあり、未だ成熟には至っていません。今後、日本における障害者雇用の法定雇用率はさらに上昇する見込みであり、企業が直面する課題はますます複雑かつ多様化していくと考えられます。しかしながら、障害者雇用に関するノウハウや実績は十分に整備されているとは言えず、社会全体において大きな課題が残されています。こうした状況下において、当社はこれまで培ってきた経験や知見を基盤に、AIやクラウドをはじめとした先端テクノロジーを駆使しながら新たな解決策を提供しています。
特に、入社前から入社後までの包括的なサポートに加え、在宅雇用支援プラットフォーム「エンカク」を通じ、場所や環境に制約されず、一人ひとりが戦力として活躍できる環境があります。またベンチャー企業からナショナルクライアントに至るまで幅広く対応できるリソースとノウハウを有している点も、当社の強みです。
その強みを生かし、今後は更に障害者雇用における上流コンサルティングへも注力をする予定です。特例子会社の設立支援や、評価制度の設計、部門間を横断しての雇用環境構築等も含めてオールインクルーシブで、支援できる体制を更に強化してまいります。
私たちは、単にテクノロジーを導入するのではなく、人と人とをつなぎ、心の通った支援を届けることを大切にしています。まだ挑戦の余地は残されていますが、広範囲を高品質にカバーしつつ、先端技術を活用することで、よりシンプルに、そしてより温かく社会課題の解決を推進したいと思います。
導入事例↓
【障害者雇用事例】パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社様 | 株式会社D&I(ディーアンドアイ) | 【東証上場】 障害者雇用・教育のインフラカンパニー
後記:GRIT人材は挑戦を支える経営戦略
―― Maenomery視点での再定義と読者へのメッセージ――
今回の取材を通じて、GRIT人材は企業の持続的成長を支える経営戦略そのものであることを、あらためて強く感じました。特にD&I様の事例は、「市場なき世界」に挑むときに、どのような人材が必要で、どのように組織文化を醸成するかという根本的な問いに対して、明確な示唆を与えてくれます。
市場創造とは、不確実性の極めて高い領域に踏み出すことを意味します。そこには成功の型や前例はなく、常に手探りで進まざるを得ません。困難や失敗はむしろ日常であり、その度に立ち上がり、何度でも復活することが求められます。だからこそ、市場創造の現場には「学び続ける柔軟性」を備えた人材が不可欠です。すなわち、素直にフィードバックを受け取り、自らの成長に転換できる“教えられ上手”であること。そして、挑戦を「自分ごと」としてとらえ、当事者意識を持って最後まで「やり抜く=GRIT」こと。これらの資質が、未知の市場を切り拓くための最大の推進力になります。
GRIT人材はまさに、その資質を体現しています。不確実な環境においても挑戦をやめず、粘り強くやり抜く力で組織を前進させていく。その姿勢は周囲の意欲を喚起し、組織全体に挑戦の文化を浸透させます。そして、挑戦と失敗を繰り返す中で何度でも立ち上がるその姿こそが、変化の激しい時代に揺るがぬ組織の強さを形づくるのです。
読者の皆様におかれましても、自社における「GRIT人材」の可能性を改めて考えていただきたいと願います。それは特別な業界や一部の先進企業に限られたものではなく、あらゆる組織が未来を切り拓く上で必要とされる普遍的な力であると、私たちは考えています。
インタビュイー
i-Linkホールディングス株式会社
代表取締役 岸本康彦(KishimotoYasuhiko)
香川県三木町出身。
16歳の頃から「独立」という強い志を抱き、同時に「人はなぜ働くのか」という根源的な問いを追求し始める。独立を志して以降、現在の事業を軌道に乗せるまでに3社の廃業を経験するという壮絶な逆境を味わう。この「再起」のプロセスこそが、現在の「自己実現こそが働く真の目的である」という信念の原点となった。2011年に株式会社i-Linkを設立、2022年には持株会社体制(ホールディングス)へ移行。
“地方企業×採用開始が3月”という圧倒的劣勢から、3名採用の逆転劇
i-Linkホールディングス株式会社は「100年後も自己実現を目指せるインフラを地方からつくる」という壮大なパーパスを掲げています。2030年までに15事業体制を築くことを目標とし、新卒社員とともに新規事業の立ち上げを加速させています。 また、立候補者は幹部へと抜擢する大胆な育成戦略を推進中です。
しかし、その新卒採用の開始時には、極めて高いハードルが存在していました。一般的な採用手法では獲得が困難な「自走型リーダー候補」を、いかにして短期間で3名獲得できたのでしょうか。スキル偏重の市場トレンドとは一線を画す、心理的特性(GRIT)を最優先した意思決定プロセスについて、具体的に解説します。

1.経営課題
求めていたのは「社長」になれる器。だから私は、即戦力採用を辞めて「新卒」に賭けた
—目標達成に向けて、当時の組織や採用活動において直面していた課題は何でしたか?
「2030年までに15事業創出」という大きな目標達成に向けた一番の課題は、新規事業を牽引できるリーダー層が不足していたことでした。既存業務をこなせる人材はいましたが、正解がない状況でも自ら考え事業を形にできる「実行者」を求めていたのです。
さらに当時はスキル・条件を基に中途採用活動を行っておりましたが、当社が求めている「困難から逃げずに挑戦し続ける姿勢」を持つ人材と出会えない状況が続いておりました。
そこで単なる人手不足の解消ではなく、将来の社長・部長を任せられる自走できる人材をどう確保するかを考えました。そして、この問いに対する答えがポテンシャルとやり抜く力(GRIT)を最重視した新卒採用戦略への転換でした。
—新卒採用を開始したとき、市場環境においてどのような課題がありましたか?
市場環境における地理的な制約と活動開始時期の遅れという、二つの課題に直面していました。
- 地方拠点による地理的制約:香川県という立地から、都市部の学生との接点が限定的であった。
- 採用市場における後発性(タイミングの不利):活動開始が3月であったため、大手企業の選考が終盤に差し掛かる状況にあり、私たちが求める「自走できる人材」の多くが、すでに就職活動を終了している時期であった。
このような不利な条件下で、いかにして高い実行力を持った人材を確保するかが、当時の最大の懸念事項でした。

2.導入背景
科学的根拠のある「粘り強さ」。Maenomeryの提唱するGRITが、私の経営哲学と完全にリンクした瞬間
—複数のエージェントを利用していたそうですが、なぜMaenomeryのGRIT人材に着目されたのですか?
当社が求める「困難を乗り越えるための精神的粘り強さ」とMaenomeryが掲げるGRIT(やり抜く力)人材がマッチすると感じたからです。
既存エージェントの紹介は、スポーツ経験者=元気がある・体力があるといった表面的な属性だけで学生をご紹介いただくことが多くありました。しかし、3度の廃業という修羅場を経験してきた私の視点では、表面的な明るさと土壇場で逃げない「やり抜く力(GRIT)」は全くの別物であると考えています。なので、既存エージェントからの紹介数はあっても、ミスマッチが続くという状況に行き詰まりを感じていました。
そこで、Maenomeryが掲げる科学的に証明されたGRIT(やり抜く力)という心理特性に着目しました。
GRITとは?=(https://www.maenomery.jp/article/5)
—そこで実際に導入に至ったわけですね。
はい。導入前から感じておりましたが、担当者の方々の誠実さと、当社の目標にコミットする高い当事者意識には感銘を受けました。当初は「本当に質の高い母集団が形成できるのか」という不安がありましたが、Maenomery社は単なるサービス提供を超え、一丸となって支援体制を構築してくれました。
実際に運用を開始すると、先行して取引していた他社を上回るスピード感で応募を集め、当社の採用活動を力強く牽引してくれました。この実行の確実性と、深く寄り添う伴走型のサポートによって導入して正解だったと確信できました。

3.成果
3名の内定承諾。共通点は「執念」と「素直さ」。私たちが“目的達成”のために欲しかった資質
—導入後、どのような成果が生まれましたか?
具体的な成果としては、3名のGRIT人材の入社承諾を獲得したことです。開始時期や地理的な不利を払拭し期待値を上回るスピードで確かな採用成果を実現できています。
採用した人材に共通したのは以下の2つです。
- 目的達成への執念:明確な原動力を持ち、達成するためのプロセスとして仕事をすることが言語化できている。
- フィードバックへの対応力:過去の経験に固執せず、面接での助言を即座に自らの行動へ反映させる「素直さ」を備えている点。
彼らのような目的のために行動し続けられる人材の存在は、既存組織に健全な競争意識をもたらすと信じています。「新卒には負けられない」という空気が醸成され、組織全体の行動基準と熱量が引き上げられると感じています。
4.成功のプロセス
面接官には見せない「学生の迷い」を共有。Maenomeryの「客観的な後押し」が学生の背中を押す。
—知名度のハンデを乗り越え、なぜ優秀な人材をクロージングできたのでしょうか?
当社の相互理解重視の選考スタイルと、Maenomeryの担当者による伴走の連携があったからだと考えます。
まず、最終選考では香川本社へ学生を招き、私との面接や現場社員との対話に計120分を費やします。ここでは当社の良い面だけでなく、泥臭い苦労や組織の課題もすべてさらけ出し、「この環境で自身の人生を切り拓けるか」を学生に問うスタイルを貫きました。しかし、この120分の対話を「単なる熱い面接」で終わらせず、確実な承諾に繋げられたのは、Maenomeryの担当者の存在があったからです。
- 本音のリアルタイム共有:選考の合間、学生が口にできない不安や迷いを担当者が丁寧にヒアリングし、即座に私へ共有してくれました。
- 追加面談の設定:学生に迷いがある際は、担当者の助言をもとに追加の面談を設定。企業側からのメッセージと、Maenomery側からの客観的な後押しが重なることで、学生の決断を促すことができました。
「企業、Maenomery、学生」という三者が情報の非対称性を解消し、強固な信頼関係を築けた事こそが、大手・都心企業に競り勝つための決定力に繋がりました。

5.GRIT人材活用の注意点
あえて「内定」とは言わない。学生に「自らの意志」で選ばせることで、入社後の覚悟を劇的に高める
—GRIT人材をマネジメントし、定着させるために意識すべき点は何ですか?
結論から申し上げれば、GRIT人材のポテンシャルを最大化させるマネジメントの核心は、「人生の目的との接続」と「主体性の尊重」の2点に集約されます。
その理由は、やり抜く力を持つ人材は、給与や待遇といった外発的な動機よりも、その仕事が自分の人生にいかなる価値をもたらすかという内発的な動機で動くからです。彼らは自らの人生を切り拓くための挑戦には、驚異的な熱量を発揮します。
具体的には、以下の2つのアプローチを徹底しています。
- 意味的価値の継続提示:単なる業務指示ではなく、この仕事があなたの人生の目的にどう繋がるかというストーリーを語り続け、仕事に深い意味を持たせます。
- 最終合格による主体的選択:採用の最終段階では、あえて「最終合格」という言葉を使いました。企業が学生を選ぶのではなく、学生に自らの意志で当社を選ばせることで、入社後の覚悟を劇的に高めています。
このように、強制ではなく価値観の共鳴による結びつきを築くことこそが、困難な状況下でも折れない、長期的な定着と活躍を実現する鍵となります。

6.今後の展望
投資ではなく「生存条件」。AI時代にこそ価値が増す組織創り
—今後の組織戦略と採用の展望についてお聞かせください。
今回の成功を弾みに、27卒では採用目標を8名に増員します。ターゲットは変わらず、将来の事業責任者を担える自己実現者です。
地方企業にとって、新卒採用はもはや将来への投資ではなく、企業の生存条件そのものです。AIによる効率化が進む時代だからこそ、自らの足で動き、現場で泥臭くやり抜けるGRIT人材の価値は相対的に高まり続けるでしょう。Maenomeryを通じて、変化を恐れず自ら道を切り拓ける若手を継続的に登用し、彼らに権限を委譲していきます。その連鎖こそが、次の100年を支える新しい事業インフラを創出すると信じています。

プロフィール
丸山 晃司 様
株式会社丸山製麵 取締役
大学卒業後、(株)ECナビ(現CARTA HOLDINGS)に新卒入社し、新規事業開発や営業統括を歴任。2018年に家業である株式会社丸山製麺へ入社し、取締役就任。
バックボーンであるIT・マーケティングの知識・経験を活かし、「食」×「IT」 の領域にてビジネスを展開。2021年9月冷凍食に関わるあらゆる事業者が集う「フローズンエコノミーラボ」を発足、その後2022年5月に一般社団法人フローズンエコノミー協会を設立、理事へも就任。
次世代経営者が直面する「実行者の不在」という課題
創業50年を超える老舗、株式会社丸山製麺。伝統的な製麺技術を守りながら、近年は新たな販路や商品を追求し、地域に根ざした「食のスタートアップ」としての進化を遂げています。
しかしその裏側では、コロナ禍での組織改革、既存事業の立て直し、新規事業の立ち上げなど、多くの困難を乗り越えた経営戦略と採用戦略が明確にありました。
技術偏重の組織における、ビジネスサイド視点の欠落と実行力不足をどう乗り越えたのか?
今回は、三代目の丸山取締役に、この課題を打破するために導入した施策の背景、そして復活を遂げた「攻めの体制」について詳しく伺います。
1. 丸山製麺の課題
職人はいるが、“売る人”がいない。売上8割減で露呈した、老舗企業の致命的な弱点
―コロナ禍で売上が8割減という壊滅的な状況下で、痛感された最大の経営課題は何でしたか?
丸山製麺所は、全従業員50名のうち8名を製麺技能士が占める熟練の職人集団であり、その麺の品質と製造技術は業界でも群を抜いています。経営を担う社長(父)もまた生粋の職人気質であり、製麺に対する強いこだわりは会社のDNAとなっています。
しかしながら、この高い技術力の裏側で、ビジネス経験を有する人材は皆無に等しいという構造的な問題も抱えていました。組織風土が技術力への過度な偏重に傾いていたため、既存・新規事業を問わず、持続的な成長を牽引できる組織体制ではないことが最大の経営課題でした。
その最中、新型コロナウイルスの感染拡大が発生しました。主要な取引先である飲食店が営業自粛に追い込まれた結果、売上は一時的に8割減という壊滅的な打撃を受けます。緊急事態宣言の解除後も業績の回復は遅れ、従業員の出社率を半減させるなど、厳しい経営判断を迫られました。
この危機的な状況を踏まえ、社長(父)と徹底的に議論した結果、私が旗振り役となり、既存事業の再構築と新規事業の創出を本格的に推進する運びとなりました。

2. きっかけ
即戦力の年収は払えない。財務的な限界で見出した、「未経験×ポテンシャル」という第3の選択肢
―当時の厳しい経営状況の中で、採用に関して具体的にどのような課題に直面されましたか?
1. 組織内の「実行力」不足
一つ目は、「実行を担えるメンバーの不在」です。 前述の通り、当社の社員の大半は製麺の職人であり、営業や企画といった事業サイドでの経験が決定的に不足していました。また、社員の年齢層が比較的高いため、彼らのキャリアと適性を考慮すると、業務内容を根本的に変更して配置転換を行うことは非現実的でした。
2. 年収の壁と採用のジレンマ
二つ目は、「求める人材と年収レンジのミスマッチ」です。 自社内での人材選抜が難しい以上、外部からの採用が唯一の手段となります。しかし、新規事業の立ち上げ経験者や、同業界で確かな実績を持つ即戦力の人材となると、当然ながら年収レンジは一気に高騰します。当時の業績が低迷している状況下では、そうしたハイレイヤーな人材を採用することは財務的に現実的ではないと判断せざるを得ませんでした。
以上の構造的な課題から、当社の活路は「高い実行力を持ちながらも、年収レンジが比較的安価な若手人材」を採用することにあると結論付けました。
その最適なソリューションを探す中で出会ったのが、Maenomery社が提供する「GRTI人材の紹介サービス」でした。

3. 最大の決め手
履歴書には書けない「本気でやり抜いた経験」。Maenomery独自のプールが、採用難の老舗企業に光を当てた
―数ある採用サービスの中で、GRIT人材に着目されたのはなぜですか?
私たちがMaenomery社に魅力を感じた最大の理由は、スポーツ、芸術活動、あるいは長期インターンやアルバイトなど、何かしらを「本気でやり抜いた経験」を持つ、いわゆるGRIT人材を紹介してくれるという点にあります。
GRITとは?→(https://www.maenomery.jp/article/5)
なぜなら、私たちが取り組む既存事業の立て直しと新規事業の立ち上げは、正解が見えない不確実性の高いミッションです。したがって、困難な状況でも業務を遂行し続ける「実行強度」と、失敗しても何度でも起き上がれる「復元力」を持ち合わせた人材が不可欠でした。
加えて、大学との独自の集客コネクションを保有しており、若手人材のプールが豊富であることも魅力的でした。これにより、当社のターゲットとする人材に多く出会える可能性が高かったのです。
4. 伴走型の丁寧なすり合わせ
社内の「パワーバランス」まで全て共有。単なる求人要件を超え、組織の裏側まで理解してくれた
―導入時のプロセスや、担当者とのすり合わせで印象的だった点があれば教えてください。
サービス導入にあたり、まずは専任の法人担当者の方と、じっくりと要件のすり合わせを行いました。
すり合わせは、単なる業務内容や採用条件の話で終わらず、会社の創業時の想いやカルチャー、そして社内の人間関係(パワーバランス)といった、普段はなかなか話さない極めて深い部分にまで及びました。この丁寧なヒアリングを通じて、担当者の方が私たちに寄り添い、「伴走」してくれているという心強い印象を強く受けました。

ー要件をすり合わせた後はどのように進みましたか?-
その後、当社の状況にマッチした候補者を数名ご紹介いただき、面接を実施しました。中でも、スポーツ経験を持つ候補者が当社の求める「実行強度」と「復元力」を体現しており、迷うことなく即入社が決定いたしました。
5. 入社後の具体的な活躍と成果
取引社数が倍増、代理店はゼロから60社へ。停滞していた事業を動かした、若手GRIT人材の「泥臭い実行力」
―実際に採用されたGRIT人材は、入社後どのように活躍されていますか?具体的な成果があれば教えてください。
現在2名が入社してくれたのですが、具体的な成果としては下記が挙げれます。
- 取引者数倍増:新規事業の開始から、取引者数は300〜400社に増加し、会社全体の取引者数が導入前の倍以上へ。
- 代理店数の増加:ほぼゼロだった代理店数が、彼らの営業活動により50〜60社に増加。

彼ら(GRIT人材)の最大の特徴は、根底に「向上心」があることです。「与えられた役割のベースを徹底的に頑張りたい」というマインドセットを持っており、その結果、対応スピードの向上や顧客対応の質の向上を常に考えながら取り組んでおります。また、メンタル面でもブレが少なく、安定的に、そして実直に業務を遂行してくれる点も魅力です。
私たちのような中小企業は、基本的に不利な状況から競争に勝ちに行く必要があります。そのため、迅速な対応やサンプルの即日提供といった彼らの行動特性そのものが、他社に対する決定的な競争優位性となりました。
実際に、彼らの地道で泥臭い営業活動のおかげで、新規事業や代理店開拓を自律的に推進してくれました。その結果、停滞していた事業は大きく動き出すことになったのです。
小川さん(写真右)
2023年11月に入社。
幼少期からサッカーを続け、大学卒業後はサッカースクールの指導者としてアシスタントを経てメインコーチとなる。その後、ビジネスマンとしての成長を求め株式会社丸山製麺へ入社。
須藤さん(写真左)
2024年8月に入社。
幼少期はサッカーに没頭し、高校から陸上に転向し、大学へも陸上競技を目的に入学。数々の入賞を経験。経営学部にて勉学へも励み、文武両道を体現。

6. 導入における注意点
教育システムがない中小企業こそ注意。GRIT人材のポテンシャルを開花させる、伴走型オンボーディングの極意
―GRIT人材のポテンシャルを最大限に引き出すために、特に注意すべき点や、丸山製麺様で工夫された点はありますか?
GRIT人材のポテンシャルを最大限に引き出すためには、「育成に時間を投じること」が重要です。
中小企業には、体系的な育成・評価システムが存在しないことが多く、せっかく人材を採用しても放置状態(オンボーディングの欠如)に陥りがちです。また、周囲の上司にビジネスサイドの経験がない場合、発生した不明点や課題が明確にならず、コミュニケーション上のエラーや認識齟齬が生じてしまうリスクがあります。
さらに、採用したGRIT人材のビジネス経験はまだ浅いため、名刺交換や提案書の構成といった基本的な「正しい業務遂行方法」を体系的にインストールする必要があります。
彼らの持つ熱意と実行力を成果に繋げるためには、具体的な道筋を示し(方向付け)、初期段階においては伴走することが不可欠です。彼らの粘り強い努力を正当に評価し、その方向性を定めることが、育成の鍵となります。自身が直接指導にあたるか、あるいは副業人材などの外部リソースも活用し、実効性のある教育体制はある程度必要だと考えています。
7. 今後の展望
次はグローバル市場。GRIT人材と共に、守りの経営から「攻めの経営」へと転換する丸山製麺の挑戦
―攻めの体制を確立された今、今後の事業展開や、GRIT人材に期待する役割についてお聞かせください。
これまでの当社は、一都三県を中心に冷蔵麺を中心に商売をしてきましたが、現在は缶詰や冷凍といった最新技術も取り入れ、全国に市場を広げています。
今後は更にグローバル市場を視野に入れ、当社のミッション「ひとりでも多くの人へ美味しいラーメンを届ける」という想いを実現したいと考えています。
実際のところ、海外でのラーメンの人気と、製麺所の供給数を考えると、需要と供給のバランスから見ても、大きな成長機会が眠っています。
今すぐ「単独で海外進出」とまではいきませんが、まずは海外に出店する日系企業へのサポートや、ジョイントベンチャー(JV)のような形で、私たちも一緒にお店を出していくことも選択肢として考えています。
そのためにも、私たちが培ってきた製麺技術を活かして、既存事業の売上を更に伸ばしたいと思います。また同時に、会社全体として更に多くの新しい事業を生み出せるよう、経営体質の変革へも取り組みます。
プロフィール
佐々木 広行 氏(ささき ひろゆき)
株式会社プロラボホールディングス 代表取締役会長 兼CEO
早稲田大学卒業後、東証一部上場企業を経て1998年に広告・マーケティング業界で起業。2002年に株式会社プロラボホールディングスを設立し、全国約29,000店以上の美容健康施設・世界21ヵ国に展開するインナービューティブランド「エステプロ・ラボ」を確立。現在は長寿遺伝子・ミトコンドリア活性・睡眠研究にも注力。
1. 課題
トップシェアゆえのジレンマ。「待ちの営業」が染みつき、描いた戦略を実行に移せない組織の限界だった
――エステプロ・ラボという圧倒的なブランドポジションを築いたにも関わらず、なぜGRIT人材の採用を検討されたのでしょうか?――
佐々木氏:結論から申し上げますと、新規マーケットへの参入ですね。当時のプロラボホールディングスは、インナービューティを主軸としたプロダクトで国内トップシェアを誇る一方、売上の9割は既存顧客からでした。また残りの“1割程度も”美容系の展示会にいらっしゃるお客様“でした。そのため、ある程度その市場では存在感を発揮することはできていたのですが、更なる事業成長を考えたときに“展示会に来ない層”や“美容室”または“整骨院”などへの市場拡大が必要だと感じていました。
――圧倒的なプロダクト力をもつが故のジレンマだったように感じています――
佐々木氏:おっしゃる通りです。しかしながら現状の組織体質だと、新市場の開拓には向いていない状態でした。というのも、展示会にいらっしゃるお客様への声掛けや既存顧客からの紹介を待つ「フォローアップ」が営業業務のメインとなっており、新規で開拓するという力強さがどうしても乏しい状態でした。
新市場のニーズは捉えて、戦略も練られている。しかしながらエクゼキューション(実行)ができない。
この課題を解決したいと思ったのが背景になります。

2. GRIT人材の印象
未経験だからこそ、まず動く。知識不足を行動量でカバーし、フィードバックで高速学習する“アウトプット主導型”の衝撃
―GRIT人材の最初の印象を教えてください―
佐々木氏:サービス契約締結後、2名がジョインしてくれました。まず何より驚かされたのは、彼らの卓越した実行力です。業界未経験であったため、当初は一定の立ち上がりの遅れを覚悟していたのですが、実際には全く反対の結果となりました。
主なミッションは新規開拓であり、業務内容自体も比較的シンプルでした。リストに基づくテレアポからアポイント獲得、そして商談へと進む。もちろん、一定の知識インプットは事前に行っていたものの、それ以上に「まず行動する」という“アウトプット主導型”のアプローチで、成果を積み重ねていく、その姿勢がとても印象的でした。そのお陰もあり、アウトプットを起点にフィードバックを得ながら学習を深めていくという好循環によって、非常にスピーディーな立ち上がりを実現していたことが、今でも鮮明に記憶に残っています。

――立ち上がりが速いと事業を推進しやすいですよね。とは言え、上手くいかない瞬間も多かったのではないでしょうか?――
佐々木氏:もちろん、うまくいかないことも多々ありました。新市場であることからサービスを理解してもらうまでに時間がかかりました。そのため何度も同じクライアントに直接訪問するなど、二度手間になる事もしばしば起こりました。しかし、それを感じさせないほど、彼らは目標達成に向けて粘り強く取り組む姿勢を貫いていました。
特に本業界においては、テレアポからのアポイント獲得の難易度が非常に高いものとなります。というのも、当社が主に活動を行う時間帯は、クライアント側が施術業務の真っ最中であることが多く、電話自体がつながりにくいという構造的な課題が存在します。
通常であれば「非効率的だ」と判断して行動を止めてしまいがちな状況にもかかわらず、彼らは行動を止めることなく、ひたむきに実行を継続しました。少しでも繋がる可能性を高めるために、架電リストの見直しや電話をかける時間帯の最適化といった改善を自ら繰り返し行い、実行し続ける。その「“やり抜く力”=GRIT」の強さが際立っていたと感じています。
一般的には敬遠されがちな「コスパが悪い」とされる取り組みにも一切逃げず、真正面から向き合い続ける姿勢。その難易度の高い行動にもかかわらず、「なんか成果を出してくれそう」という雰囲気を自然と醸し出していた点に、GRIT人材ならではの価値を感じました。
実際、多くの人が避ける領域には、大きなチャンスが埋もれているように思えます。そしてGRIT人材は、自らの過去の経験を通じて、「コスパが悪いことの先には成果がある」という成功体験を積み重ねているのではと感じます。そうした“経験知”があるからこそ、困難な局面にも臆することなく挑み続けられるのではないでしょうか。

3. 成果
売上140%成長の正体。個人の熱量が組織へ伝播し、全員で「未開拓領域」へ挑む空気が生まれた
―GRIT人材が既存メンバーと融合したことによっての変化はありますか?―
佐々木氏:組織全体のGRITが一気に高まったと実感しました。とくに彼らが既存社員と一緒に業務を共にするようになったタイミングで組織全体の空気が変化したように感じます。入社当初は部署を分けて別々に業務を担っていましたが、新規開拓の立ち上がりが予想以上に順調だったため、既存顧客へのサービス深化も含めて、既存社員と一緒に業務を取り組む方向へと舵をきりました。
加えて、彼らには上記で述べたような、契約単価の割に労力が大きく、LTV(顧客生涯価値)も高くない、いわゆる「コストパフォーマンスが悪い」とされる顧客層の担当を任せるという、難易度の高いチャレンジを託しました。
しかし結果的に、その「非効率に見える顧客群」は、実はライトユーザーからロイヤルユーザーへと転換する可能性を秘めた未開拓の優良顧客層であることが明らかになったのです。私たち自身が「手間がかかる=成果につながらない」という先入観に囚われ、無意識に敬遠していただけだったという事実に、ある種の衝撃を受けました。
この成功体験を目の当たりにしたことで、既存の社員もこれまで手をつけなかった業務領域に対し、自ら積極的に関わろうとする姿勢へと変化しました。
GRIT人材が体現した「やり抜けば結果はついてくる」という成果に対する実感値が、組織全体に伝播し、いわば“結果への期待値コントロール”がなされたことが大きな転機となりました。
そうした意味でも、「一見非効率に思える挑戦が、組織にとって価値へと転換されうる」という強烈な成功体験をチーム全体に共有できたことが、組織GRITを飛躍的に加速させる原動力となったと強く感じています。
そして、実際の具体的成果としても”売上が140%成長”を実現し、定量的にも定性的にも会社として成長できたことが一番の驚きです。
4.GRIT人材採用のポイント
挑戦と支援の両立。GRIT人材を「使い捨て」にせず、内発的動機で走らせるためのマネジメントの極意
――GRIT人材が活躍できた背景には、活躍できる環境や風土があったように感じます。とくに既存社員の方々が“受け入れる姿勢”は、まさにプロラボさんが今まで構築してきた“利他の精神”からくる人格の高さを感じました。そのうえで既存メンバーとの融合にはどのようなことを意識されましたか?――
佐々木氏:重視したポイントは、いくつかありますが、主には以下の3点です。
- 会社の中長期的な成長戦略および理念の実現において、GRIT人材の存在が不可欠であることを明示する。
- 既存メンバーに対し、GRIT人材の参画によってどのような相乗効果や利益が生まれるかを丁寧に説明する。
- GRIT人材が取り組む業務難易度をあらかじめ共有し、実力含めて認められるように設計する。
もちろん、彼ら自身が持つ資質の高さも、大きな要因となりました。社会性に優れ、初対面でも自然に馴染むスピードが非常に速い。また、事業部全体が伸び悩んでおり、雰囲気が沈滞していた時期にも、自ら率先して場を盛り上げるだけでなく、行動の最前線に立ち、組織に活気をもたらしてくれました。
加えて、彼らは常に先輩社員や上司に対してリスペクトの念を持ち、礼節を忘れませんでした。一方で、既存社員側も、単なる“新入り”としてではなく、対等な仲間として迎え入れ、相互に感謝を重ねながら関係を築いてくれた点も、融合成功の大きな要因だったと感じています。これは、もともと当社が大切にしてきた「理念に基づく経営」の土壌があってこそ可能になったものだと捉えています。
その理念を実現するために“GRIT人材”が必要であるということを頻度高く伝え、具体的にどのような業務を実行し、会社へ貢献しているのか、またどのような相乗効果が生まれるのか。という社内ブランディングを徹底しました。

―空中戦ではなく佐々木さん自身が連帯感を形成していくこと、非常に参考になります。ちなみにGRIT人材に対してはどのように施策を通して、ロイヤリティを高めましたか?―
佐々木氏:当社は、理念を起点とした事業運営を行っており、仕組みや制度の随所にビジョンやミッションと接触するタッチポイントを設けています。「私たちは何のためにこの事業を行っているのか」「サービスやプロダクトは誰のために存在しているのか」といった問いを、定期的に発信する場を設けています。
とはいえ、最も重要なのは、日々の業務や何気ない会話の中で、理念やビジョンを“肌感覚で伝える”ことだと考えています。当時の営業部長が意識的に彼らとの接点を増やし、短時間でも頻度高くビジョンや価値観を直接共有することに力を入れていました。こうした継続的な理念との接触を通じて、内発的な動機づけが促進され、やりがいの源泉となる土壌が育まれたように思います。
そのうえで、ただモチベーションを高めるだけではなく、「実際に成果を出せるように伴走する」ことにも重点を置きました。内発的動機づけと結果創出をワンセットで支援することで、彼らの能力が最大限に発揮されたのだと考えています。
その結果、現在では彼らは各事業部の責任者を担うまでに成長し、組織における中核人材として確固たる地位を築いています。会社の風土も、従来の“手厚いフォローアップ型”から、「挑戦と支援の両立」を志向するバランス型へと進化しました。まさに彼らは、現在の当社にとって欠かすことのできない存在へと成長してくれたのです。

5. 今後の展望
次は「睡眠マーケット」でNo.1を獲る。腸活・温活に続く第3の矢で、健康寿命の延伸に挑む
―プロラボホールディング社の今後の展望をお聞かせください―
佐々木氏:我々の目指す理想は、“健康寿命の延伸に貢献するNo1企業”になることです。そして健康寿命の延伸に必要なのは食事、体温、睡眠です。これをプロラボ風に変換すると[腸活、温活、眠活]となります。腸活、温活においてはインナービューティ事業を含め一定の市場シェアの獲得ができました。ここから更に成長角度を上げるため、睡眠マーケットでもNo,1を目指します。この睡眠マーケットのポテンシャルは計り知れなく、当社としても注力している領域になります。日本人の70%が睡眠課題を抱えており、いびきなど何かしらの要因で良質な睡眠を取れていない事実があります。この課題を我々の睡眠美容コンテンツで解決していきたいと考えております。
現在ではその第一弾として睡眠のケアも叶う水分子コントロールデバイス「WOTT」を開発し、トップアスリートや経営者に使用頂いております。多くの利用ユーザーからも睡眠の質改善や、日中のパフォーマンス向上が段違いになったなど、高評価をいただきプロダクトの有効性を感じております。またこの技術は、原理特許を取得しているため、他が参入できない状態です。(https://prolabo-solution.com/wott/)
睡眠市場、インナービューティ市場も含めグローバル展開をさらに加速させ、健康寿命の延伸に貢献するNo,1企業として存在感を発揮していきたいと思います。

6. まとめ
―利他の精神と相互感謝が、不確実性の高い選択を正解にしてきた―
プロラボホールディングス社の事例は、「GRIT人材」と「既存社員」を融合することで、組織全体の行動様式を上書きできると示唆させてくれました。成熟産業や既存マーケットにおいては、新規事業や海外展開など“非効率で不確実”な領域と向き合う必要があり、その大きな不確実性に組織全体として挑む必要があります。しかし、それらは個人の力で解決できるものではなく、「組織全体としてのやり抜く力=組織的GRIT」がなければ、成しえるものではありません。どの企業も一定数の情報を持ち合わせて、合理的に意思決定を行うものと仮定をすれば、戦略や戦術は似たものにもなるはずです。ただ、その戦略・戦術を“絵に描いた餅”で終わらせず、顧客の心に響く価値に変換するためには、それを実現する実行力が必要不可欠となります。プロラボホールディンス社は、新しい社員を含めた会社のあらゆるリソースを駆使して、全員でやり抜くという「組織としての実行力」が圧倒的でした。まさに、理念を空想ではなく、社員ひとりひとりが利他の精神のもと、相互感謝を忘れず、目の前のユーザーに価値を届けている企業だと感じました。その姿勢こそが、組織的GRITを体現し、変革を現実の成果へと結び付ける原動力となっているのではないでしょうか。
1.GRIT採用の背景と組織課題
“今まで以上に「挑戦を恐れず、変化を恐れず、衆知を集めていく」必要がありました。”
ー お寿司デリバリー市場において圧倒的な存在感を発揮する貴社が、なぜGRIT人材の採用を推進することになったのでしょうか?
須藤氏:コロナ禍でのデリバリー中食市場の形成が大きく影響しております。それまでは外食や内食と比してメジャーになりきれていませんでしたが、コロナ禍では選択肢の一つとして多くの皆様に認知されました。それによってデリバリー業全体の需要が顕在化し、私たちも大きな顧客層の拡大を果たしました。
そしてそれは他の多くの外食業界の中食市場への参入の呼び水ともなり、消費者にとってはデリバリーの中でも更に多くの選択肢を持つことができるようになりました。しかしそれと同時に、それぞれの食のデリバリーを運営する企業にとっては、お客様に選ばれるために更なる高付加価値の提供が求められることを意味しました。
私たちの会社においても新規事業領域へのチャレンジのみならず、昨今の物価高などの影響もあるなか、既存事業においても、常に新たなチャレンジを繰り返し変化していくことが命題となっています。会社全体で今まで以上に「挑戦を恐れず、変化を恐れず、衆知を集めていく」ことが命題となっていったのです。そのためには仲間とともに困難を乗り越える前向きさと感謝の気持ちを持ち、やり抜く力を持ったGRIT人財の存在が不可欠だと判断したのです。

ー「衆知を集める」ことを重要視されていますが、なぜそのような考えに至ったのでしょうか?
須藤氏:私たちは「衆知を集める」ということを理念実現のための方法としてとても大切にしています。それは“みんなの知恵を集め、みんなの力を集める”という意味であり、あらゆる仕事において最も重要なビジネススキルであるとも位置付けていています。それは、たとえどれほど卓越した知識やスキルを備えていたとしても、一人で表現できる世界には限りがあり、その領域はきわめて狭小であるという前提からきています。そして、ひとつの店舗に集まるさまざまな背景や価値観を持った人たちと誠実に向き合い、互いを理解しようとすることで、そこに共通の価値観が生まれ、チームとしての力が最大化されると信じているのです。
私たちの会社では、新卒の社員の全員にまず店長を目指して仕事をしてもらっていますが、この目的は、単にスキルや知識を身につけて飲食店の店長をやるという概念ではなく、お店のマネジメントを通じて「周知を集める」力を身につけ、誠実に人と向き合う姿勢を学ぶことにあるのです。
採用活動においては、私たちが大切にしているそうした価値観を正しく伝えるため、一人ひとりとの丁寧な対話を重視してきましたが、限られた資源において決して効率のいい方法とは言えませんでした。そしてその意味では採用に苦慮していた実態が当時ありました。
御社にご紹介いただくような、チームスポーツや部活動を通じて努力されてきた方たちは、すでにこうした価値観を実感として持っていることが多いと感じています。プレッシャーや困難を避けるものではなく、むしろ特権ととらえられる前向きさとそして感謝の心を持っています。私たちはそのような方々を「GRIT人財」として捉え、仕事を通じてともに成長し、働く仲間として積極的に採用したいと考えています。

2. サービス導入とGRIT人材の印象
“成功体験も、苦い経験もすべて糧にする。私たちが求めていた「成長マインド」を持つ学生たち”
実際にサービスを導入してみての率直な感想をお伺いさせて下さい。
田村氏:当社としては、まず何よりも「人材の質」にこだわり、前述のような人材の採用を最優先事項として考えていました。その想いに共感していただけたのか、マエノメリ社からは、単に人数を揃えることではなく、1人ひとりのマッチングの質を重視している姿勢が強く伝わってきました。
特に印象的だったのは、マエノメリ社が求人紹介をゴールとせず、「求職者の自己実現プロセスの設計」にまで踏み込んで、当社と一緒に伴走してくれる点です。採用イベントでの説明会や面接の後も、求職者が何を感じ、どのような評価をしたのかを、良い点・課題点の両面から、誠実にフィードバックしてくれました。
紹介された候補者についても、共通して見られた特徴は「前向きな姿勢」です。特に体育会系出身の学生が多かったこともあり、学生時代の成功体験も苦い経験も、自分の成長につなげる糧として捉える力を感じました。まさに“成長マインド”を備えた状態でご紹介いただいていたと実感しています。

3. GRIT採用の効果
“マネジメント未経験の新人が、ベテラン店長を変えた。「命を燃やした経験」が組織に火をつける”
実際に入社したGRIT人材の印象はどうですか?
清水氏:現在、新入社員たちは研修中でまだ慣れない業務も多く、緊張した様子も見受けられます。しかし初めての業務にも積極的に取り組む姿勢が、周囲に良い影響を与えていると感じます。私の同期がOJT店舗の店長として従事しているのですが、彼らから新入社員たちが周りに与える店舗への影響についてよく話を聞いています。
実際の業務内容は、調理や配達という店舗運営業務だけでなく、採用・教育などの人のマネジメントや食材の品質管理、売り上げの分析などの店舗管理業務も含まれます。
マネジメント経験のない新入社員が、3か月の研修を経て配属後にマネジメント業務を担います。店舗によってはアルバイトメンバーの現場経験が長いケースもあり、マネジメント業務の難易度は決して低くありません。
もちろん、会社としてマネジメント研修を手厚く行っています。しかし、座学で学ぶことと、現場で体験することとでは、情報の密度やリアルさに大きな差があります。そんな手探り状態の中にあっても、彼らはアルバイトの方々に対して敬意を持ち、感謝の気持ちを素直に伝えています。
そして「お客様に“幸せ”を届ける」という共通の目標に向けて、周りと協力し、ひとりではなくチームとして取り組もうとする姿勢を貫いています。その本気度の高さや前向きな姿勢に、周囲も自然と触発され、「チームとして頑張ろう」「やり抜こう!」という前向き雰囲気が店舗全体に広がっています。

人事部 マネージャー 田村 啓一郎 氏
―「チームとして頑張ろう、やり抜こう」まさに組織グリット力が高いチームの特徴だと感じます。そのような周りを灯せる人材の共通点はどのようなものがありますか?―
須藤氏:とくに私たちが重視しているのは、「命を燃やした経験があるか」という観点です。表現が抽象的ではありますが私が思うに、どのような分野であっても成果を出すためには、本気の努力が欠かせないと考えております。その過程では、時に辛いことや、いわゆる“コスパが悪い”と感じるような状況にも直面します。また、結果が出るかどうか分からない中で挑戦し続けるためには、相当な精神的タフさも求められます。
それらを乗り越えるために必要なのが、圧倒的な情熱です。そしてその情熱の“灼熱度”こそが、自分自身の命を燃やし、周囲にも伝播していく力になるのだと、私たちは感じています。
ただし、ここで忘れてはならないのは、情熱のベクトルは人それぞれ異なるということです。だからこそ、私たちが果たすべき役割は、その人なりの情熱を見つける手助けをし、そして一緒に“最大火力”を引き出す方法を考え、伴走していくこと。この一貫した姿勢をブラさないということを人事部として徹底しています。
4. 店舗ビジネスにおける組織GRITの出現方法
“「怒らない経営」が挑戦のセーフティーネットになる。物理的距離を超える、本部と現場の相互リスペクト”
店舗ビジネスにおいて、本部と現場(店舗)が、これほどまでに一体感があり組織GRITを発揮しているケースは珍しく感じます。組織運営において、人事側では、どのような工夫をされていますか?
須藤氏:工夫は多くあるのですが、根本のところは当社が重視する“怒らない経営”。ここにすべてが集約されています。肩書や立場に関係なく人を人として誠実に扱う、相互に感謝する。ただ重要なのは、まずは本部側からその感謝を積極的に伝えていくことだと思っています。だからこそ、我々は新人研修を人事部で行った後に、自信と信頼を持って教育担当者にOJTとして想いを託すことができます。ただ、これも全て現場の皆さんが全力で、新人メンバーの育成に協力してくれているからこそです。その姿勢や姿に、本部の我々は本当に敬意を払っております。普段の業務を実施しながら、新人育成にも支援的且つ、常に挑戦ができる“失敗しても良いという心理的セーフティーネット”を用意してくれている。まさに会社の理想を実現するために、組織全体で一体となっている感覚です。実際に新人メンバーの研修後の全体発表会では、各店舗の多くの仲間がオンラインで参加してくれて、応援コメントをくれたりもします。
―店舗ビジネスという物理的に離れる空間だからこその、手触り感を大切にされているのですね。具体的に実施している施策はどのようなものがありますか?―
清水氏:具体的な施策としてのひとつは、新入社員たちの研修中の様子をお届けしている“新卒通信”です。新入社員が3-4名ほどのユニットになり、自分たちの自己紹介や意気込みなどを動画や絵などで表現して会社全体に発信する取組となります。同期同士の双方向的な繋がりを意識すると同時に、空間的に離れている各店舗のメンバーにも新入社員の顔を知ってもらいたいという想いから取り組んでいます。

人事部 清水里穂 氏
5. 今後の展望
“変わり続けて、変わらない美味しいをデリバリーする”
お寿司のデリバリー市場ではトップに君臨されているかと思います。今後の更なる展望を教えてください。
須藤氏:今後はそばや天ぷら、鰻など、他の日本食もカバーする複合化戦略を本格的に展開していきます。また単に商品を広げるだけでなく、地域店舗の内外装を改装し、ライブ感のあるテイクアウト体験を提供することで、ブランドの世界観と顧客体験の質を高めていきたいと考えています。また、社内の開発体制を内製化し、DXを推進することで、業務効率の向上とサービス品質の両立を実現しています。これらの取り組みによって、従業員やフランチャイズパートナーとの共創もより深まり、持続的な成長の基盤が整ってきました。将来的には、アジアを中心とした海外市場にも展開を進め、“世界のご家庭の生活も、もっと美味しくもっと便利に”していきたいと考えております。
6. まとめ
”細部配慮と相互感謝が個人GRITを“組織GRITに昇華させる”
インタビューを通して印象的だったことは、本部や人事部の方々の現場に対する深いリスペクト精神でした。直営店であってもFC店舗であっても、同じ目標に向かう仲間として、全力で組織的支援をしようとする姿勢が、会話の端々から伝わってきました。その根底には“怒らない経営”という理念浸透が影響しているようにも感じます。店舗展開を事業戦略として選択する企業は、空間的・物理的にも距離のある関係となります。ライドオンエクスプレスホールディングス様は、だからこそ相手の立場に立ち、価値観を否定せず、チームワークと感謝の気持ちをもって共に目標に向かう。この“怒らない経営”という基盤があるからこそ“情熱が熾り、挑戦が起こり、事業が興る”。この理念ドリブンを全社で徹底する姿勢が重要なのだということを示唆してくれました。
そして、そのような環境があるからこそ、GRIT人材も能動的に挑戦ができる、そして失敗を学習の機会と捉え、再挑戦できる。ライドオンエクスプレスホールディング様は、この「能動的挑戦→失敗→意欲的学習→再挑戦」というサイクルを個人レベルではなく、組織レベルで実行しているように見受けられました。空中戦に終始せず、本部と現場の不断の細部配慮と相互感謝が“個人GRITを組織GRITへ昇華させた”好例であり、店舗展開を戦略としている企業の空間的・物理的距離の組織課題を越えていく参考になるのではないでしょうか。

後記:GRIT人材は挑戦を支える経営戦略